多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培

ガーデコ流!植物の育て方

堆肥や腐葉土、ピートモスなどの有機物を含まない多孔質培養土を使った
バラの鉢植え栽培を2020年10月よりスタートさせました。
堆肥や腐葉土などで土作りをして有機肥料(油粕や魚粉、ぼかし肥料など)を使った
「有機無農薬栽培」をしている方はいらっしゃいますが、
それらを使わず一般的な液肥(ハイポネックス原液)と
水遣りだけでバラを管理します。
もちろん無農薬で。
有機物を含まない「無機」培養土で化成の「無機」肥料を使って
「無農薬」でバラを育てる”無機無農薬栽培”。
この栽培方法をやっている方を見たことはありません。
新たなチャレンジだと思っています。
管理方法を極力シンプルにしていますので、
誰でも真似することができます(真似する人は居ないか…汗)。
臭いや衛生面から堆肥や有機肥料を使いにくい環境、
例えば室内の観葉植物や集合住宅のベランダでの植物栽培などには
この栽培方法は役に立つかもしれません。
気になる方はぜひ参考にして下さい。

  1. 多孔質培養土とは?
    1. 多孔質培養土の材料①硬質ゼオライト(モルデナイト)
      1. 硬質ゼオライト(モルデナイト)のメリット①保肥力に優れる
      2. 硬質ゼオライト(モルデナイト)のメリット②リン酸吸収係数が低い
    2. 多孔質培養土の材料②バーミキュライト
      1. バーミキュライトのメリット①通気性を損なわず保水性に優れる
      2. バーミキュライトのメリット②保肥力に優れる
    3. 多孔質培養土の材料③鹿沼土
      1. 鹿沼土のメリット①通気性・水はけが良い
      2. 鹿沼土のメリット②陰イオン交換容量(AEC)が大きい
    4. 多孔質培養土の材料④日向土
      1. 日向土のメリット①硬質で通気性・水はけの良い状態を長く保てる
    5. 多孔質培養土の材料⑤もみがら燻炭
  2. 多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント①栽培環境
    1. 日当たりの良い場所に鉢を置く
    2. 風通しの良い場所に鉢を置く
      1. 風通しの良い環境が重要な理由①蒸散を促す
        1. 蒸散の役割①気化熱で葉の温度を下げる
        2. 蒸散の役割②光合成に必要な二酸化炭素を取り込む
        3. 蒸散の役割③水と水に溶けた養分を吸い上げる手助け
      2. 風通しの良い環境が重要な理由②病害虫を防ぐ
  3. 多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント②水遣り
    1. 多孔質培養土に植え付けたバラには毎日たっぷり水遣り
  4. 多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント③肥料
    1. おすすめの肥料「ハイポネックス原液」
      1. ハイポネックス原液をおすすめする理由:植物の生育に必要な栄養素が全て含まれている
      2. ハイポネックス原液の使い方:500倍に薄めて週1回株元へ与える
  5. 多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培まとめ

多孔質培養土とは?

多孔質培養土(たこうしつばいようど)とは、
無数の小さい穴(細孔)が空いた資材をブレンドした培養土です。
ミクロの細孔が空気や水、肥料成分を保持するため、
通気性・水はけが良く、保水性、保肥力も兼ね備えています。
各資材について詳しく見ていきましょう。

多孔質培養土の材料①硬質ゼオライト(モルデナイト)

硬質ゼオライト(モルデナイト)は多孔質培養土の要となる資材です。
土壌の保肥力を向上や根腐れ防止剤として知られているゼオライトですが、
大まかに軟質のクリノプチロライトと硬質のモルデナイトの2種類があります。
硬質ゼオライトであるモルデナイトを使う理由としては、
・通気性と水はけに優れる
・粒子が安定していて持続性に優れる
この2点からです。

硬質ゼオライト(モルデナイト)のメリット①保肥力に優れる

硬質ゼオライト(モルデナイト)を使用するメリットとして
保肥力に優れる点が挙げられます。
保肥力を表す指標としてCEC(陽イオン交換容量)がありますが、
一般的な植物栽培に使われている赤玉土が約20meq/100gであるのに対し、
硬質ゼオライト(モルデナイト)のCECは約150meg/100g。
実に7~8倍もの保肥力を持っています。
保肥力に優れた用土は肥料のムダ(流亡)を防ぐだけでなく、
用土内に過剰な肥料成分が溶け出すことが無くなります。
植物が必要な時に過不足無く肥料を吸収できることは
生育面で非常に大きなメリットとなります。

硬質ゼオライト(モルデナイト)のメリット②リン酸吸収係数が低い

ゼオライトは赤玉土や鹿沼土など他の園芸用土と比べて
リン酸吸収係数が低いことが特徴です。
リン酸(P)は窒素(N)やカリウム(K)と並んで
植物に多く吸収される多量要素とされています。
その中でリン酸は開花・結実を促すので
バラや他の草花を綺麗に咲かせたい場合には特に効いて欲しい肥料成分です。
しかし、リン酸は土に含まれるアルミニウムや鉄などと結び付きやすく
植物が吸収できない状態になってしまうので
「効きづらい」肥料成分としても知られています。
土がリン酸を吸収・固定する程度を示す数値がリン酸吸収係数で、
リン酸吸収係数の高い土では植物がリン酸を吸収・利用しづらくなります。
ゼオライトはリン酸吸収係数が他の園芸用土と比べて低いので、
植物がリン酸を使用しやすくなります。

多孔質培養土の材料②バーミキュライト

多孔質培養土において硬質ゼオライト(モルデナイト)に次いで
配合割合の多い資材がバーミキュライトです。
バーミキュライトは園芸用土としてはポピュラーな存在で、
通気性・保水性・保肥力のバランスが良いので
種まき用土や育苗用土として良く使われています。

バーミキュライトのメリット①通気性を損なわず保水性に優れる

バーミキュライトは原料の蛭石を高温で焼成してできた人工用土です。
焼成することによって蛭石がアコーディオン状に膨張するため、
その無数の隙間に空気や水を溜め込んだり、肥料成分を吸着することができます。
通気性を損なわずにしっかりと保水してくれる点に魅力を感じて
多孔質培養土の要の資材の一つとして採用しています。

バーミキュライトのメリット②保肥力に優れる

バーミキュライトは保肥力に優れる点も大きなメリットです。
保肥力の指標となるCEC(陽イオン交換容量)は約150meq/100gで、
ゼオライトとほとんど同等の数値です。
代表的な園芸用土の赤玉土や鹿沼土の7~8倍。
特にアンモニア態窒素とカリウムの吸着性能に優れています。

多孔質培養土の材料③鹿沼土

鹿沼土は栃木県鹿沼市で産出される火山灰由来の軽石です。
酸性(pH4~5)の園芸用土として知られていて、
サツキやツツジなど酸性を好む植物の基本用土として使われます。
多孔質培養土における鹿沼土の役割はpH調整。
配合比率の高いゼオライトがややpHが高いため、
バランスを取るために酸性用土である鹿沼土を配合しています。

鹿沼土のメリット①通気性・水はけが良い

鹿沼土は「土」と言うよりは「軽石」の部類になります。
よって通気性・水はけに優れた多孔質資材です。

鹿沼土のメリット②陰イオン交換容量(AEC)が大きい

保肥力の大きさを示す指標としてCEC(陽イオン交換容量)が知られていますが、
これはアンモニアやカリウム、マグネシウム、カルシウムなど
水に溶けた際に陽イオンとなる肥料成分を吸着する機能の大きさを示しています。
一方で植物が吸収しやすい硝酸態窒素(NO₃⁻)は陰イオンです。
鹿沼土に多く含まれるアロフェンという粘土鉱物が陰イオンを吸着するため、
流亡しやすい硝酸態窒素を蓄えることができます。
鹿沼土は陰イオン交換容量(AEC)が大きい資材です。

多孔質培養土の材料④日向土

日向土は宮崎県などで主に産出される軽石です。
多孔質で通気性・水はけに優れるのが特徴。
保肥力はほとんどありません。

日向土のメリット①硬質で通気性・水はけの良い状態を長く保てる

日向土は粒が潰れにくいため通気性・水はけの良い状態を長く保つことができます。
水洗いすれば繰り返し園芸用土として利用できるのは大きなメリットです。

多孔質培養土の材料⑤もみがら燻炭

もみがら燻炭はコメを収穫する際に発生する籾殻を炭化させたもので、
軽量で多孔質、通気性・保水性に優れた資材です。

多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント①栽培環境

多孔質培養土を使おうが使うまいが、
栽培方法に関係無く気にしておきたいのが「栽培環境」です。

日当たりの良い場所に鉢を置く

バラは日当たりの良い環境を好みます。
バラに限らず多くの植物は光合成によって
エネルギー源である糖質を得ています。
バラのように大きな花を咲かせる植物は
より多くのエネルギーを必要とします。
最低でも3~4時間は日の当たる場所に鉢を置きましょう。
光合成は午前中に活発に行われるため
できれば午前中にしっかりと日の当たる環境がベストです。

風通しの良い場所に鉢を置く

バラは適度に風通しの良い環境を好みます。
意外に見落としがちなのがこの風通し。
なぜ風通しの良い環境に鉢を置くことが重要なのかを説明します。

風通しの良い環境が重要な理由①蒸散を促す

バラなど植物が健全に育つために、
葉の気孔が開くことで植物体内の水分が
水蒸気となって排出される「蒸散」が重要な役割を担っています。

蒸散の役割①気化熱で葉の温度を下げる

蒸散によって植物体内から水分が排出されると
その気化熱で周囲の温度を下げます。
直射日光によって葉の温度が上がり過ぎないよう
蒸散によって体温調節をしています。

蒸散の役割②光合成に必要な二酸化炭素を取り込む

葉の気孔が開くことで蒸散が行われますが、
同時に気孔からは二酸化炭素が取り込まれています。
蒸散はスムーズに光合成を行うためにも重要です。

蒸散の役割③水と水に溶けた養分を吸い上げる手助け

蒸散によって植物体内の水分量が減少すると、
根からの水分の吸い上げが促進されます。
水と同時に水に溶けている無機養分も吸い上げますから
蒸散がスムーズに行われていると
植物の生育にとってより有利になります。

風通しの良い環境が重要な理由②病害虫を防ぐ

風通しの良い環境は病害虫被害の軽減に役立ちます。
例えばバラの二大病害である黒点病とうどんこ病。
黒点病(黒星病)は葉が数時間濡れた状態が続くと感染しやすくなります。
風通しが良ければ水に濡れたとしても乾きやすいので
黒点病に感染しづらくなります。
うどん粉病は日中と夜間の気温差が激しい環境で発生しやすい病気です。
風通しが良い環境で葉の蒸散を促すことで
株回りの温度と湿度を安定させることで感染しづらくなります。
また、ハダニなどの害虫も風通しが良い環境に置くことで被害を軽減できます。

バラの鉢植え栽培において環境整備は最も重要です。
日当たり・風通しの良い場所に鉢を置くこと。
それだけで随分とバラが育てやすくなりますよ。

多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント②水遣り

一般的なバラの栽培方法では水遣りに関して、
「土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷり与える」
と表現されていることが多いと思います。
でも、水遣りのタイミングって難しいですよね。
水遣りし過ぎると根腐れしてしまうし、
土を乾かし過ぎてしまうと水切れを起こしてしまう。
「水遣り3年」という言葉があるほど
水遣りの加減は難しいとされているようです。
多孔質培養土に植え付けたバラの水遣りに関してはとってもシンプルです。

多孔質培養土に植え付けたバラには毎日たっぷり水遣り

多孔質培養土は通気性・水はけを最優先に考えてブレンドした培養土です。
毎日水遣りをしたとしても根腐れをすることはありません。
水は植物にとって必要不可欠なものです。
毎日たっぷりと与えます。

多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培のポイント③肥料

多孔質培養土には堆肥や腐葉土などの有機物が含まれていないため、
微生物による分解を必要としない化成肥料で育てることになります。
化成肥料の中でおすすめなのが「ハイポネックス原液」です。
ホームセンターなどで手に入る最もポピュラーな液肥ですよね。

おすすめの肥料「ハイポネックス原液」

ハイポネックス原液は、水で薄めて使うタイプの肥料です。
家庭園芸用の肥料としては最もポピュラーで手に入れやすい肥料だと思います。

ハイポネックス原液をおすすめする理由:植物の生育に必要な栄養素が全て含まれている

植物の生育に必要な栄養素は17種類あり必須元素と言われます。

  • 多量要素:窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)
  • 中量要素:カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、イオウ(S)
  • 微量要素:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、塩素(Cl)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)
  • 空気や水から供給:炭素(C)、水素(H)、酸素(O)

空気や水から供給される炭素(C)、水素(H)、酸素(O)を除くと残りは14元素。
ハイポネックス原液にはこの14元素にビタミンを加えた15の栄養素が含まれています。
植物の生育に必要な栄養素が全て含まれているので、
あれこれと肥料を買う必要は無し。これ1本で十分です。

ハイポネックス原液の使い方:500倍に薄めて週1回株元へ与える

ハイポネックス原液は水で薄めて使うタイプの液体肥料です。
バラ栽培には約500倍に薄めて株元に与えます。
与える量は鉢底から流れ出る程度でOK。

多孔質培養土によるバラの無機無農薬栽培まとめ

  • 多孔質資材をブレンドした培養土にバラを植え付ける
  • 日当たりや風通しの良い場所に鉢を置く
  • 水遣りは毎日たっぷりと行う
  • 肥料はハイポネックス原液を500倍に薄めて週1回与える


こうやってまとめてみると、とてもシンプル(汗)
この栽培方法で育てているバラの生育状況は
ツイッターで公開していきます。
興味のある方はご覧下さいね。

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