窒素肥料の種類まとめ

窒素(チッソ)

植物に与える肥料にはさまざまな成分が含まれています。
窒素・リン酸・カリウムは「肥料の三大成分(3要素)」と言われ、
植物の生長に大きな影響を与えます。
今回は窒素を含んだ肥料の種類についてまとめてみます。

窒素とは?

窒素(N)は、植物のタンパク質や葉緑素、
DNA、RNAなどのもととなる物質です。
窒素は空気中に約80%含まれていますが、
植物は空気中の窒素を利用することができません。
空気中の窒素ガスと水素ガスからアンモニアを合成して作られた
化学肥料や、食品製造の副産物(油粕や魚かすなど)を利用して
作られた有機肥料などに含まれる窒素成分が植物の生長を促します。

窒素を含む化学肥料

窒素を含む化学肥料をご紹介します。
化学肥料とは化学的に合成された無機肥料で
窒素・リン酸・カリウムのうち1つしか含まないものを「単肥」、
2つ以上含むものを「複合肥料」と言います。

硫安(硫酸アンモニウム)

硫安(硫酸アンモニウム)は硫酸とアンモニアを合成して
作られるほか、工業の副産物として回収されることも多く
安価な窒素肥料として流通しています。

硫安(硫酸アンモニウム)の肥料成分

硫安は窒素・リン酸・カリウムのうち
窒素のみを含む肥料(単肥)です。

硫安(硫酸アンモニウム)の肥料成分(例)
  • 窒素(N)… 21%
  • リン酸(P)… ー(無し)
  • カリウム(K)… ー(無し)

硫安のメリット

硫安のメリットは、即効性があることです。
気温の低い時期であっても効き目が早くあらわれるので
農業分野で重宝されている肥料です。

硫安のデメリット

硫安のデメリットは、土壌を酸性化させてしまうことです。
植物が硫安の肥料成分である窒素を吸収すると、
酸性の硫酸イオンが土壌に残るためです。
土壌が酸性に傾くとアルミニウムなどが溶け出し、
根の生育を阻害するなどの悪影響が懸念されます。

尿素

尿素は窒素成分を多く含む肥料です。
化学式はCH₄N₂Oで、炭素(C)を含む有機化合物です。
では有機肥料なのか?と言われると…う~ん、分かりません。
一般的には化学肥料として扱われているので、ここでも同様に扱います。

尿素の肥料成分

尿素は窒素・リン酸・カリウムのうち
窒素のみを含む肥料(単肥)です。

尿素の肥料成分(例)
  • 窒素(N)… 46%
  • リン酸(P)… ー(無し)
  • カリウム(K)… ー(無し)

尿素のメリット

尿素のメリットは水溶性で即効性があることです。
ただし、気温の低い時期の即効性は硫安に劣ります。
また、硫安と比べて土壌を酸性化させない点もメリットと言えます。
尿素は水に良く溶けるので液肥として活用されています。
土壌灌注で根に与えるだけでなく、
葉面散布をさせても植物は良く吸収します。

尿素のデメリット

尿素は窒素成分を多く含む肥料なので、
窒素過剰に注意が必要です。
また、気温の低い冬には尿素肥料の効き始めが遅くなります。
これは尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素である
「ウレアーゼ」の活性が低いからです。
夏季であれば2日程度で肥料効果を実感できますが、
冬季は1週間程度の期間を要します。

石灰窒素

石灰窒素は窒素肥料としてだけでなく
殺虫や殺菌、除草など農薬効果を期待できる肥料です。
炭化カルシウムと窒素を合成して作られます。

石灰窒素のメリット

石灰窒素のメリットは、農薬+窒素肥料の
ダブルで効果を期待できることです。

石灰窒素のデメリット

石灰窒素のデメリットは扱いがやや難しい点があります。
農薬成分であるシアナミドは植物にも人体にも毒性があります。
石灰窒素を施した後冬なら7~10日、夏なら3~5日は
植物の種まきや苗の植え付けはできません。
また、人体への影響としては散布直後に飲酒をすると
急性アルコール中毒を引き起こすことが知られています。
石灰窒素に関しては良く調べた上で取り扱う必要があるでしょう。

窒素を含む化成肥料

窒素を含む化成肥料をご紹介します。
化成肥料とは、化学肥料を混合するなど
化学的処理を加えることによって製造された肥料で、
窒素・リン酸・カリウムの3要素のうち2種類以上、
15%以上の量を含むものを指します。
化成肥料のうち3要素の合計が15%~29%のものを「普通化成肥料」、
3要素の合計が30%以上のものを「高度化成肥料」と言います。

IB化成肥料

IB化成肥料とは、イソブチルアルデヒド縮合尿素を含む化成肥料です。
土に混ぜ込むと水にゆっくりと溶け窒素成分である尿素が染み出します。
即効性は無いもののゆっくりと効きめが持続する緩効性肥料です。

IB化成肥料のメリット

IB化成肥料のメリットは、根傷みの心配が少ないことです。
土壌水分によってゆっくりと溶け出すタイプの肥料なので、
土壌溶液の浸透圧が高くなりづらく
植物に吸水ストレスを与えないのは大きなメリットです。
また、窒素・リン酸・カリウムの3要素が比較的バランス良く
含まれているのでIB化成だけで植物を育てることも可能です。

IB化成肥料のデメリット

IB化成肥料はゆっくりと効くタイプの肥料です。
強いてデメリットを挙げるとすれば、即効性の無さ。
肥料を効かせたいタイミングを心得ている方は、
液肥などを併用することで肥効のメリハリをつけています。

窒素を含む有機質肥料

窒素を含む有機質の肥料は、
食品製造の際に出る副産物を利用したものが多いです。
タンパク質やアミノ酸など比較的分子の大きな状態の
窒素成分が含まれているので、
化学肥料と比べると即効性は無いものの
土壌微生物の有用なエサになるなど
化学肥料には無いメリットもあります。

油粕(油かす)

油粕は菜種や大豆などから油を搾った後の残りかすです。
油かすは植物性有機質肥料として幅広く使われています。

油粕(油かす)の肥料成分

油粕は窒素・リン酸・カリウムの3要素を全て含んでいますが、
窒素成分が多めの有機肥料です。

油粕(油かす)の肥料成分(例)
  • 窒素(N)… 5%
  • リン酸(P)… 2%
  • カリウム(K)…1%

油粕のメリット

油粕(油かす)は化学肥料と比べて即効性はありません。
しかし、土壌微生物によって分解されることで
ゆっくりと効きめがあらわれてきます。
野菜などを植えつける前に施す元肥として広く利用されています。
土壌微生物を増やす効果が期待できる部分も
化学肥料には無いメリットと言えるでしょう。

油粕のデメリット

油粕のデメリットは即効性が無いことです。
その点では化学肥料に軍配が上がりますね。
また、未発酵の油粕は臭いが強いので
住宅地のガーデニングではやや使いづらいでしょう。
発酵油粕であれば臭いが少ない商品もありますので、
マンションのベランダ栽培や住宅地でのガーデニングなど
肥料の臭いが心配な方には発酵油粕がおすすめです。

魚粉(魚粕)

マグロやカツオ、ニシンやイワシなどの魚から
油を搾った残りかすを加工して作られるのが魚粉(魚粕)です。
植物性有機肥料の代表が油粕だとすれば、
動物性有機肥料の代表は魚粉ですね。

魚粉(魚粕)の肥料成分

魚粉(魚粕)は肥料成分として窒素・リン酸を含みます。
3要素の一つ、カリウムはほとんど含まれていません。

魚粉(魚粕)の肥料成分(例)
  • 窒素(N)… 6%
  • リン酸(P)… 6%
  • カリウム(K)… ー(ほとんど無し)

魚粉(魚粕)肥料のメリット

魚粉肥料はアミノ酸態の窒素が多く含まれています。
植物はアミノ酸態窒素の一部をそのまま利用できるので、
化学肥料を与えた場合よりも光合成産物の消費が少なくて済みます。
結果的に野菜の甘み・旨味が増すなどの効果を得られやすくなります。

魚粉(魚粕)肥料のデメリット

魚粉肥料も油粕と同様に即効性はありません。
また、臭いも強いので住宅地やマンションなどでは
使いづらいかもしれません。
カリウムがほとんど含まれていないので、
他の肥料(草木灰など)でカリウムを補う必要があります。

ぼかし肥料(発酵肥料)

ぼかし肥料とは、油粕や魚粉、米ぬかなどの有機物を
混ぜ合わせて発酵させた肥料のことを言います。

ぼかし肥料(発酵肥料)のメリット

ぼかし肥料は発酵処理を施しているため
有機肥料と比べて肥効が早くあらわれるのが特徴です。
さらに、土壌の有用微生物を増やす効果も期待できるので、
化学肥料と有機肥料の良い面を併せ持った肥料です。

ぼかし肥料(発酵肥料)のデメリット

発酵処理を施しているとは言え、臭いは強いです。
その点で住宅地やマンションのベランダでは使いづらいかも。

窒素肥料の種類まとめ

窒素肥料には様々な種類があります。
窒素は植物の生育段階によって
効かせるべきタイミングや量が変わってきます。
また、季節によっても肥料の効き目が違ってくるので
窒素肥料を使いこなすのは結構難しい。
家庭菜園初心者やガーデニング初心者の方には
緩効性化成肥料やぼかし肥料など
肥料成分がバランス良く含まれていて
じっくりと効き目が続くものが使いやすいでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました