突然ですが、土壌pHの測定をしていますか?
土壌pHを調べるためには土壌酸度計などの道具が必要なので
「わざわざ土壌酸度計を購入してまで調べなくても…」と
躊躇してしまうかもしれません。
しかし、土壌酸度は植物の生育に大きな影響を与えるため
定期的にチェックしておく必要があります。
では、酸性に傾いた土壌だとどのような生育障害があるのでしょうか?
酸性土壌とは?
土壌酸度は土の中の水素イオン濃度の数値(pH)で表されます。
pH7.0が中性で、それ以下が酸性、それ以上がアルカリ性です。
植物の種類によって最適な土壌酸度は異なるのですが、
一般的には弱酸性(pH5.5~6.5)の土が栽培に適しています。
いわゆる「酸性土壌」とは、pH5.0以下の強酸性の土壌のことを指します。
酸性土壌の原因は?
土壌が酸性化する(土壌pHが下がる)原因は主に3つです。
- 雨によって土壌ミネラルが失われること
- 酸性肥料の過剰使用(硫安、硫酸カリなど)
- 収穫物の持ち出し(畑など)
土壌の酸性化原因①雨
自然の恵みである「雨」が土壌を酸性に傾ける原因と言われても
なかなかピンときませんよね。
実は雨には大気中の二酸化炭素が溶け込んでいて、
いわゆる「炭酸水」の状態になっています。
もちろんシュワシュワと泡が立つほどには溶け込んでいませんが、
pHで言うと5.6くらいの弱酸性です。
雨が降り注ぐことによって土壌内のカルシウムやマグネシウムなどの
ミネラル成分が溶け、流亡してしまいます。
日本は雨が多い国なのでこの傾向が強く、
一部の地域を除いて土壌が酸性に傾きやすいと言われています。
土壌の酸性化原因②酸性肥料の過剰使用
植物を育てる上で肥料は必要となるものですが、
それが土壌の酸性化(pHを下げる)原因になっている場合があります。
代表的な窒素肥料「硫安」を例にしてみましょう。
硫安は硫酸アンモニウムの略で、化学式だと【(NH₄)₂SO₄】です。
水に良く溶ける即効性の窒素肥料で、
土壌に施すとアンモニア態窒素として植物がすぐに吸収できます。
アンモニア態窒素が吸収されると、土壌には硫酸イオンが残ります。
この硫酸イオンによって土壌が酸性に傾くというわけです。
硫安の他にも塩安、硫酸カリウム、塩化カリウムなども同様に
過剰使用が土壌を酸性化させる原因となります。
土壌の酸性化原因③収穫物の持ち出し
畑や庭などで家庭菜園を楽しんでいる方は、
収穫した野菜を持ち出します。
当然ですよね、食べるんですから。
でも、結果的に植物が吸収したカルシウムやマグネシウムなどの
アルカリ成分を持ち出してしまうことになります。
意外なことに、収穫物を持ち出すことも
土壌pHを下げる原因となるのです。
酸性土壌による生育障害とは?
酸性土壌とはpH5.0よりも低い強酸性土壌であることを書きました。
では、酸性土壌だと植物の生育にどのような影響が出るのでしょうか?
酸性土壌の悪影響①アルミニウムイオンによる生育障害
土壌が酸性に傾く(pHが下がる)と、アルミニウムが溶け出してきます。
溶け出したアルミニウムイオンは植物にとって強い毒性を持ち、
根の伸長が著しく阻害されることが知られています。
根にダメージを受けた植物は、当然ですが生育不良となります。
酸性土壌の悪影響②植物がリン酸を吸収できなくなる
酸性土壌で溶け出したアルミニウムにはもう一つ大きな問題があります。
植物の3要素である窒素・リン酸・カリウム、
その中の「リン酸」とアルミニウムが結合し
植物が吸収できない状態になってしまうのです。
リン酸はエネルギーの運び屋であるATPの成分であり、
根の伸長や開花・結実に必要な成分です。
そのリン酸を吸収できない状態は植物の生育にとって非常にヤバいです…。
酸性土壌の悪影響③糸状菌由来の土壌病害が増える
酸性土壌では糸状菌が増加する傾向があります。
細菌や放線菌などとのバランスが崩れることによって
糸状菌由来の土壌病害が増えることになります。
酸性土壌を改良するには?(pHを上げる方法)
酸性土壌を改良する(土壌pHの調整する)ためには、
①石灰資材を投入する
②土壌の保肥力を高める
上記2つのアプローチがあります。
酸性土壌を改良する方法①石灰資材を投入する
酸性土壌を改良する一般的な方法は、
消石灰や苦土石灰などの石灰資材を投入することです。
石灰資材の酸性土壌改良効果
石灰資材の酸性土壌改良効果をまとめてみましょう。
消石灰は速やかに酸性土壌を中和する効果があるのですが、
取扱いがやや難しい(皮膚に付着するとかぶれる、失明リスクがある等)ため、
使用する際には保護メガネやマスク、保護手袋を必ず着用します。
苦土石灰や牡蠣殻などの有機石灰は消石灰と比べて即効性は劣りますが
持続性に優れ、すぐに種まきや苗の植え付けができるなどのメリットがあります。
酸性土壌を改良する方法②土壌の保肥力を高める
石灰資材の投入が短期的な対症療法だとするならば、
土壌の保肥力を高めることは中長期的に根本から見直しをはかる
「原因療法」と言えます。
土壌の保肥力を高める=土作り
土壌の保肥力を高めることはすなわち、土作りを行うということです。
土作りの基本は植物性堆肥と良質な粘土鉱物(モンモリロナイト)、
もみがら燻炭などの炭資材を併用して混ぜ込むことです。
土作りについては別の記事に詳しく書いていますので
そちらを参考にして下さい。
酸性土壌による生育障害とは?まとめ
酸性土壌による生育障害についてまとめてみましょう。
- 土壌の酸性化の原因は雨、酸性肥料、収穫物の持ち出し
- 酸性土壌ではアルミニウム障害によって根の伸長が阻害される
- 酸性土壌では植物がリン酸を吸収できなくなる
- 酸性土壌では糸状菌由来の病害が増える傾向がある
- 酸性土壌の改良には石灰資材の投入が有効
- 酸性土壌を根本的に改善するためには土作りが重要
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