化学肥料(化成肥料)を使うと「土が痩せる」とか「土が固くなる」と良く言われます。
化学的に合成された肥料よりも有機肥料(油粕や鶏糞など)の方が
何となく土にとって良いイメージがありますよね。
化学肥料(化成肥料)を使うと土が痩せると言うのは本当なのでしょうか?
土や土地が痩せるってどういうこと?
「土が痩せる」と言うのは具体的にどのような状態のことを指すのでしょうか?
「痩せた土」と反対の意味で使われるのは「肥えた土」「肥沃な土」ですから、
- 植物が育ちやすい土=「肥えた土」
- 植物が育ちにくい土=「痩せた土」
このように考えて良さそうです。
では、どのような土だと植物が育ちづらいのかを考えてみましょう。
痩せた土の特徴①固く締まっていて植物が根を張りにくい
植物が育ちにくい痩せた土の特徴として代表的なものが、
「土が固く締まっている」ということ。
カチカチに固まった土はスコップやシャベルで穴を掘るのも大変です。
そういった土の場合、植物も根を伸ばしづらくなります。
しっかりと根を張ることができないと
植物は生長に必要な水や栄養を十分に吸収することができません。
その結果、植物が育ちづらくなります。
痩せた土の特徴②肥料成分を保持する力が弱い
痩せた土の特徴としてもう一つ挙げられるのが
肥料成分を保持する力が弱いことです。
痩せた土は土壌有機物(腐植)が少なく、含まれる鉱物も劣化しています。
それにより肥料成分を保持する力が弱くなっています。
仮に肥料を与えたとしても雨や水遣りによって流亡しやすくなります。
植物が必要な時に必要な栄養を吸収できないばかりか、
過剰害も出やすくなります。
痩せた土の特徴③土壌微生物の数や種類が少ない
痩せた土は土壌微生物の数や種類が少ないことも特徴として挙げられます。
土壌微生物が分泌する成分(多糖類)は、
土壌粒子をくっつけて団粒化し適度な隙間を作ります。
土に適度な隙間ができると植物は根を張りやすくなります。
土壌微生物が少なくなると分泌される成分も少なくなるため、
団粒構造が崩れて土が固く締まった状態になり植物が根を張りづらくなります。
また、土壌微生物の数や種類が多い場合には拮抗作用といって
特定の病原性菌が増殖するのを抑制する効果があります。
土壌微生物の数や種類が少なくなるとこの拮抗作用が弱くなり、
植物が病気に罹りやすくなります。
ここまでは痩せた土の特徴について書きました。
では、化学肥料(化成肥料)を使うと
本当に土がこのような状態になるのでしょうか?
化学肥料(化成肥料)を使うことで本当に土が固くなるのか?
痩せた土の特徴として最初に挙げたのが
「土が固くなる」というものでした。
では、化学肥料(化成肥料)を使うと本当に土が固くなるのでしょうか?
土は鉱物、腐植、生物でできている
土の構成要素は鉱物、有機物(腐植)、生物です。
- 鉱物…粘土や砂など
- 腐植…土壌有機物が微生物によって分解されることで生成される物質
- 生物…ミミズやダニなどの土壌生物、カビや放線菌などの微生物
化学肥料(化成肥料)には腐植の素や生物のエサとなる有機物が含まれていない
化学肥料(化成肥料)には腐植の素となったり
土壌生物のエサとなる有機物が含まれていません。
化学肥料(化成肥料)だけを与えていた場合には、
土壌の腐植は少しずつ微生物に分解されて減少し、
エサが少なくなることで土壌微生物も減少していきます。
腐植や生物が減少することで土が固く締まっていく
腐植や土壌微生物が分泌する成分(多糖類)は
土壌粒子をくっつけて団粒化する役割を担っています。
それらが減少することで土の団粒構造が崩れ
土は固く締まっていくことになります。
「化学肥料(化成肥料)が土を固くする」は”半分”正しい
化学肥料(化成肥料)が土を固く劣化させる直接の原因ではありません。
腐植の素や土壌生物のエサとなる有機物を含まないことで
腐植や生物が減少することが土を固く劣化させる原因です。
化学肥料(化成肥料)だけを使って栽培をした場合、
腐植や生物の減少を招くのは事実ですから「半分」正しい、としました。
化学肥料(化成肥料)を使う際は堆肥などの有機物も併用を
化学肥料(化成肥料)は植物を育てる上で
非常に役に立つものであることは疑う余地がありません。
しかし、化学肥料(化成肥料)”だけ”では腐植や生物の減少を招き、
少しずつ土が劣化してしまいます。
土壌の劣化を防ぐためには堆肥などを土に混ぜ込むことで
腐植を補給することがとても重要になります。
化学肥料を使うと土が痩せるって本当?まとめ
- 痩せた土=植物が育ちにくい土
- 痩せた土は固く締まっていて植物の根が伸びづらい
- 土が固く締まる原因は腐植と土壌微生物の減少
- 化学肥料は腐植の素となる有機物を含まない
- 化学肥料は土壌微生物のエサとなる有機物を含まない
- 化学肥料だけを使った場合、腐植と土壌微生物が減少しやすい
- 化学肥料だけを使った場合、(間接的な原因となり)土が固く劣化しやすい
- 化学肥料と堆肥を併用することで土の劣化は防ぐことができる
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