尿素と硫安(硫酸アンモニウム)は肥料成分として窒素( N )のみを含む単肥です。
元肥や追肥など似通った使われ方をしていますが、
尿素と硫安にはどのような違いがあるのでしょうか?
それぞれの成分や特徴からその違いをまとめてみましょう。
尿素とは?
尿素はアンモニアと炭酸ガスを高温・高圧で反応させて合成したもので、
化学式はCO(NH₂)₂です。
尿素の肥料成分
窒素( N ):46%
リン酸( P ):0%
カリウム( K ):0%
窒素しか含まれていない、いわゆる「単肥」になります。
硫安(硫酸アンモニウム)とは?
硫安(硫酸アンモニウム)は硫酸とアンモニアを合成したもので、
化学式は(NH₄)₂SO₄です。
硫安の肥料成分
窒素( N ):21%
リン酸( P ):0%
カリウム( K ):0%
その他の肥料成分として、硫黄( S )も含まれています。
尿素と硫安の違いその①土壌酸度への影響
尿素は土壌微生物の働きによってアンモニアと二酸化炭素に分解されます。
(尿素は水に溶けるがそのままでは土壌にも吸着されず植物の根も吸収・利用できない)
アンモニアは水に溶けて土壌コロイドに吸着もしくは植物の根によって吸収・利用されます。
残るのは二酸化炭素。土壌酸度への影響はありません。
硫安は水に溶けるとイオン化します。
アンモニウムイオンは土壌に吸着もしくは植物の根によって吸収・利用されます。
残った硫酸イオン(硫酸根)によって土壌が酸性に傾きます。
尿素は土壌酸度への影響は無く、硫安は土壌酸度を酸性に傾けるため
硫安を繰り返し使用する場合には土壌酸度の調整をする必要が出てきます。
尿素と硫安の違いその②肥効の速さ
尿素は水に溶けますが、そのままでは土壌に吸着されず
植物の根も吸収・利用できません。
土壌微生物の働きによって尿素態窒素がアンモニア態窒素に分解され、
ようやく土壌に吸着もしくは植物の根によって吸収・利用されます。
尿素がアンモニア態窒素に分解されるまで
夏場で約2日、冬場など気温・地温が低い時期は1週間程度かかります。
一方、硫安は水に溶けると速やかにイオン化し
アンモニウムイオンが土壌に吸着もしくは植物の根によって吸収・利用されます。
よって、肥効の速さという観点では硫安に軍配が上がります。
尿素と硫安の違いその③価格
尿素と硫安の価格の違いを見てみましょう。
家庭菜園やガーデニングで使いやすい700g入りのものが
同じメーカーから販売されていて、価格はそれぞれ300円前後。
しかし、含まれている窒素成分が尿素が46%なのに対して硫安は21%。
尿素は窒素1g≒1円
硫安は窒素1g≒2円
尿素の方がコストパフォーマンスが高い窒素肥料と言えますね。
尿素と硫安の違いまとめ
同じ窒素肥料としてポピュラーな尿素と硫安ですが、
(硫安は土壌を酸性化させる)
・硫安の方が窒素の効き(肥効)が速い
・尿素の方がコスパ高い
以上のことを考えると、やや尿素の方が使い勝手が良いかなと思います。
しかしながら、硫安の肥効の速さは魅力的で
特に気温や地温が低い冬場などに窒素を効かせたい場合には
硫安を使うメリットが大きいと思います。
春から秋にかけては尿素を使い、冬場などに限定して硫安を使用すれば
土壌酸度に対しての影響もそれほど出ずに
コストパフォーマンスの高い施肥ができるはずです。
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