リン酸は、窒素やカリウムと並んで肥料の三大要素と言われています。
リン酸はエネルギー通貨ATP(アデノシン三リン酸)の材料で
生長の盛んな部位(新芽や根、子実など)に集中し細胞の増加に使われています。
花芽の分化や開花・結実を促進することから
「花肥(はなごえ)・実肥(みごえ)」とも言われます。
「花をたくさん咲かせたい!」
「立派な果実を収穫したい!」
と、ついつい多く施肥してしまいがちですが…実はリン酸には厄介な問題があるんです。
リン酸は…効かない!
リン酸はとても効きづらい肥料なんです。
土壌に投入されたリン酸は鉄やアルミニウムなどと結合しやすく、
「リン酸鉄」「リン酸アルミニウム」と言った難分解性の物質となり
植物が利用・吸収しづらくなってしまいます。
リン酸肥料の利用率は10%~20%と言われ、
酸性土壌では鉄やアルミニウムが活性化するため更に利用されづらくなります。
しかも、リン酸は…動かない!
リン酸は窒素やカリウムと違って土壌内でほとんど動きません。
つまり、土壌表面にリン酸肥料を施肥したとしても土に染み込んでいかず
植物の根まで届かないということです。
さて、このようにリン酸はやや扱いづらい肥料要素ですが
どのようにすれば“効く”ようになるのでしょうか?
物理性の改善をして根が伸びやすい環境を作る!
リン酸は土壌内でほとんど動かないので、
根がリン酸のあるところまで伸びていける環境を作ることが大事です。
その為には土壌の物理性の改善が大切になります。
粘土質土壌で通気性・水はけが悪い場合
粘土質土壌で通気性・水はけが悪いと根はなかなか伸びていきません。
日向土や珪藻土焼成粒、木炭や籾殻燻炭、バーク堆肥、ココピートなどの
多孔質資材を混ぜ込むことによって粘土質土壌の物理性が改善され
水はけ・通気性の良く、根が伸びやすい環境が整います。
砂質土壌で水切れを起こしやすい場合
砂質土壌では通気性・水はけが良い一方で
保水性・保肥力に乏しいので水切れや肥料焼けが起きやすい傾向があります。
水切れも肥料やけも根へのダメージは大きいので
保水性・保肥力の改善は優先的に行う必要があります。
保水性・保肥力を改善するには腐植と粘土が必要です。
腐植を多く含むバーク堆肥やピートモスなどの有機物と
良質な粘土鉱物である珪酸塩白土やゼオライト、
バーミキュライトなどを混ぜ込みます。
土壌pHを6~6.5へ矯正する!
リン酸は土壌内の鉄やアルミニウムと結合して
植物が利用しづらい物質に変化してしまうことは先ほど書きました。
土壌pHを6~6.5の弱酸性に矯正することで
鉄やアルミニウムの溶出を抑え不活化させてリン酸を固定されにくくします。
pH調整は苦土石灰で行うのが一般的ですが、
木炭やもみ殻くんたん、珪酸塩白土やゼオライトなどでも可能です。
木炭や籾殻燻炭は酸性土壌をややアルカリにpH調整すると同時に
土壌微生物の棲家として機能し、土壌の生物性を高めます。
また、多孔質資材なので土壌の物理性の改善にも役立ちます。
珪酸塩白土やゼオライトは土壌pHを弱酸性に近づける
働きを持つと同時に土壌の保肥力を高めます。
土づくりの観点からは炭や粘土鉱物を投入するのがオススメ。
堆肥に含まれる腐植酸で鉄やアルミをキレート化!
堆肥に含まれる腐植酸には土壌内の鉄やアルミニウムを
封じ込める働き「キレート作用」があります。
腐植酸のキレート作用によってリン酸が鉄やアルミニウムと結合せずに
植物が利用しやすくなります。
腐植酸はピートモスやバーク堆肥、ココピートオールドなど
良く腐植した植物性堆肥に多く含まれます。
近年注目を浴びているバッドグアノ(コウモリの糞)は
腐植酸を含むリン酸肥料なので、比較的効果の高いものです。
リン酸肥料を効かせるためには?まとめ
リン酸肥料を効かせるためには、結局「土づくり」が大切なんです。
・物理性を改善して根の伸びやすい環境を作る!
・土壌pHを6~6.5に調整する!
・堆肥を施す!
基本的な土づくりができていれば、自然とリン酸肥料は効くようになってきます。
くれぐれも過剰施肥はしないようにしましょう。
(リン酸との拮抗作用で微量要素が欠乏してしまいます)
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