植物を育てる上で土壌微生物の働きは欠かせません。
※水耕栽培などは例外
土壌微生物は有機物を分解して植物が栄養素として取り込みやすい状態にしてくれる一方で、
土壌微生物のバランスが崩れると病害の原因になります。
土壌微生物のバランスが崩れる原因となるのは
・過剰施肥
・農薬(土壌消毒)
などが挙げられます。
ではどうすれば土壌微生物をバランス良く増やすことができるのでしょうか?
土壌微生物にとっての「衣・食・住」をポイントに書いていきましょう。
土壌微生物にとっての「衣」
いわゆる衣食住の「衣」は
“ころも”、すなわち衣服のことです。
土壌微生物は服を着ているわけではありませんが…(汗)。
気温(地温)の変化や紫外線によって
土壌微生物はバランスを崩しやすくなります。
土壌の温度変化を和らげ、紫外線を防ぐ資材を用いることで
土壌微生物にとって過ごしやすい環境を整えることができます。
土壌微生物の「衣」となる資材とは?
土壌微生物にとって「衣」となる資材は、「マルチング材」です。
とは言っても農業用のビニールマルチでは無く、
ゆっくりと分解される植物性の有機物で土壌表面を覆う
「有機マルチ」をおすすめします。
稲わら
稲わらは家庭菜園でも良く用いられるマルチング材です。
地温の変化を和らげ、直射日光から植物の株元を守ります。
また、通気性が良いので土壌微生物の呼吸を妨げることがありません。
草マルチ
刈り芝や雑草などを植物の株元に敷くことで稲わらと同様の効果を得られます。
剪定枝
剪定枝も草マルチや稲わらと同様の効果を期待できます。
実際に剪定枝を厚くマルチングしておいたバラの株元は
しっとりとした団粒構造の土になっていました。
有機マルチの目安は?
地温の安定や保湿のためには
有機マルチの厚さが5cm程度になるように
厚めに敷くのがポイントです。
土壌微生物の「食」
衣食住の「食」は、“食べ物”ですよね。
土壌微生物はいわゆる有機物をエサにしています。
植物は光合成によって炭素を取り込むことができるため
無機養分だけでも育つことができますが、
土壌微生物は炭素を含む有機物を体内に取り込むことによって
生命の維持や活動のエネルギーを得ています。
土壌微生物の「食」となる資材とは?
土壌微生物の「食」、すなわちエサとなる資材は有機物ですが
その中でも「多糖類」を多く含む有機物をおすすめします。
糖質やでんぷん、タンパク質などの易分解性有機物は
速やかに土壌微生物のエサとなって分解されていきますが、
急激な微生物の増殖による呼吸熱やガスの発生によって
植物の根にダメージを与えることがあります。
一方、多糖類は分解が比較的緩やかなので、
中長期にわたって土壌微生物の食べ物として存在してくれます。
海藻粉末
海藻にはアルギン酸などの多糖類が多く含まれています。
その多糖類が土壌微生物の良好なエサとなります。
また、ネバネバ成分である多糖類を土壌に混ぜ込むと
粒子をくっつけて短期的に団粒化させることができるので特におすすめ。
海藻粉末の使用量の目安は?
海藻粉末は花壇や家庭菜園1平方メートルあたり
100g程度を目安に施すと良いでしょう。
※商品によって使用量の目安が異なります。
カニガラ
カニガラにはキチンという多糖類が多く含まれています。
キチンは有用微生物である放線菌のエサとなり、
病害の原因とされるフザリウム菌やセンチュウなどを抑制する効果が期待できます。
カニガラの使用量の目安は?
カニガラは窒素を約3%、リン酸も同様に約3%程度含んでいます。
比較的ゆっくりと分解されるのですが(2か月で無機化率50%程度)、
過剰投入は控えましょう。
1平方メートルあたり300g~500g程度が目安になります。
土壌微生物にとっての「住」
衣食住の「住」は、
“住み家”です。
土壌微生物の棲家は当然ながら土壌なのですが、
土壌の状態によっては微生物のバランスが大きく崩れてしまいます。
土壌微生物にとっての良い棲家は、
通気性が良く、保水性・保肥力に優れた土です。
多くの微生物は呼吸をしていますから
通気性の悪い(=土壌酸素の少ない)環境ではうまく活動できず、
微生物のバランスが崩れます。
また、水分も微生物の活動に必要なものなので
あまりに乾燥しやすい環境では微生物の活性が落ちます。
保肥力は一見すると微生物と関係無いように思えますが、
保肥力に優れた土は土壌酸度(pH)が安定しています。
安定した土壌酸度はバランスの良い微生物相を守ります。
土壌微生物の「住」となる資材とは?
土壌微生物の棲家を整える資材としては
「炭」をおすすめします。
炭にはとても小さな穴が無数に開いているので、土壌に混ぜ込むことで
適度な“すき間”を作り出すことができます。
そのすき間に酸素や水分を保持することができるため、
土壌微生物にとって最適な棲家となります。
もみ殻燻炭(もみがらくんたん)
稲(イネ)を収穫し乾燥して脱穀する際に発生するのが籾殻(モミガラ)で、
それを低温でいぶし焼きにして炭化させたものが籾殻くん炭です。
ホームセンターなどでも販売されているので比較的手に入れやすい資材ですよね。
木炭や竹炭なども籾殻くんたんと同様の効果を期待できます。
→もみがらくんたん40リットル
→炭粉50リットル
→竹炭1リットル
炭の使用量の目安は?
もみがら燻炭や木炭、竹炭などは土壌微生物の棲家としてとても有効ですが、
過剰投入すると土が軽くなり過ぎて植物を支えられなくなるため
1平方メートルあたり5~10リットル程度を目安に
土としっかり混ぜ合わせます。
土壌微生物の衣食住を整えるおすすめ資材まとめ
・稲わらでマルチング
・刈り芝や雑草で草マルチ
・剪定枝でマルチング
「食」
・海藻粉末
・カニガラ
「住」
・もみがら燻炭
・木炭
・竹炭
これらの資材を上手く使って
土壌微生物に優しい土づくりをしましょう。
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