うどん粉病は、芽吹きだした新芽や若葉、蕾に粉をまぶしたように
白いカビに覆われる病気でバラの観賞価値を損ないます。
別名「白い悪魔」…。
うどんこ病は黒点病と並んでバラの二大病害と言われています。
それだけ悩まされている方が多い病気…なのでしょうね。
なのでしょうね…と他人事のように言える理由。
実は、私はうどんこ病に悩まされたことがありません(汗)。
かれこれ7~8年ほどバラの無農薬栽培をしていて
黒点病やべと病、灰色カビ病など一通りの
バラの病気は経験してきました。
しかし、うどんこ病に関しては放任栽培している白モッコウバラに
数年に一度ほんの少し見かける程度。
他の鉢バラ、地植えバラに関してはほぼ皆無です。
困っていないのでうどん粉病について深く調べることもせず、
(病気の写真も無いし)ブログにも書いていませんでした。
ところが、前回のブログ記事
「バラに肥料をあげすぎるとどうなる?」を書いた後にふと、
自分が今までうどんこ病に悩まされていなかった理由が
腑に落ちたので、記事にまとめてみようと思った次第です。
バラのうどんこ病はどんな病気?
まずは薔薇のうどんこ病の特徴をまとめてみましょう。
うどんこ病の発生原因はカビ!でもジメジメより乾燥に注意!
上にも書いた通り、バラのうどんこ病は糸状菌いわゆるカビが原因です。
カビと言うと暗くてジメジメ…というイメージですが、
うどん粉病の原因菌はむしろ乾燥気味の環境で蔓延するので注意が必要です。
雨の当たる場所で庭植え・地植えされたバラよりも
ビニールハウスやマンションのベランダなど
雨の当たらない環境で育てられているバラの方が
うどんこ病の被害に遭いやすくなります。
「バラは肥料食い」このフレーズが病気を招く
「バラは肥料食い」。バラを育てている方なら
一度は聞いたことのあるフレーズだと思います。
元肥をどっさりと与える慣習が一般的となっていますが、これだと
- 肥料を与え過ぎるとバラが水を吸い上げづらくなる
- 窒素肥料が効き過ぎるとバラが軟弱に育つ
これらの問題点が発生します。
慣行栽培では農薬散布を前提としているので
病気が発生しても抑えられるんですけど、
病気の発生自体を止める発想は無いようです。
たくさんの肥料を一度に与えるやり方は、
うどんこ病発生の大きな原因になっていると思います。
「水やりは土の表面が乾いてから」これもダメだと思う
「水やりは土の表面が乾いてから」。
これも良く耳にする園芸フレーズですね。
おそらく根腐れを気にしているのでしょう。
でも、水やりを控えるのは良いとは思えません。
実は、育てているバラの中でほぼ唯一うどんこ病に罹るのが
放任栽培(肥料無し、水やり無し、土壌改良無し)の
白モッコウバラなんです。
モッコウバラは丈夫なバラとして有名ですよね。
でも、他のバラよりも丈夫な白モッコウバラが数年に一度ですが
うどんこ病に罹る…と言うのは不思議でした。
モッコウバラには肥料を与えていない、
つまり一般的に言われている窒素肥料の過多が原因で
うどんこ病になっているわけでは無い。
では、モッコウバラと他のバラとの育て方の違いは?
答えは「水」です。
モッコウバラは地植えで放任栽培なので
水遣りをしていません。
よって土壌の水分は天候に大きく左右されているはずです。
寒暖差の激しい時期に晴れが続いて
土壌が乾燥状態になるなどの条件が重なると
うどんこ病が発生しているようです。
だから、毎年発生するのでは無く、数年に一度なのね。
無農薬栽培でうどんこ病に罹らないためのキーワードは「水」
無農薬でうどんこ病に悩まされなくなるなんて、
いったいどんな資材なんでしょう?
まさか、特別なアイテムとして高く売り付けるつもりなのでは?
…なんて思った方、残念でした(汗)。
水です。ただの水。
正確には「水の循環」と言うべきか。
水はバラにとって最も重要な物質と言っても過言ではありません。
植物体の80~90%を占める水は、
光合成の材料として使われるほか、蒸散による体温調節の働きや
栄養を植物体に行き渡らせるなどさまざまな働きをしています。
この水の循環が正常に行えないと生理障害や
病害が発生しやすくなります。
うどんこ病も例外では無いと考えます。
窒素肥料を与え過ぎるとバラが水を吸い上げづらくなる
前回のブログ記事でも書きましたが、
肥料をあげすぎると土壌溶液の浸透圧が高まるため
バラが水を吸い上げづらくなります。
バラは主に根から水を吸収しているので、
「水の循環」という観点から見ると
スタートから躓いている感じです(汗)。
水やりを控える意味って?
水やりを控える意味ってあるのでしょうか?
土壌の三相分布
土壌には「三相分布」と言って、
固相・液相・気相の体積割合で物理性を見る方法があります。
固相は砂や粘土、堆肥などの有機物で構成される土壌粒子の割合。
液相は水の割合、気相は空気の割合ですね。
理想の三相分布は固相40%、液相30%、気相30%と言われています。
水遣りによってこの三相分布が変化します。
液相が増えて気相が減る、と言うことですね。
水やり後に植物が水を吸い上げたり
土壌から水分が蒸発したりすると
液相が減って気相が増えてきます。
水やりの頻繁に行うと液相が高く気相が低い状態が続くため
植物の根が酸素不足に陥り、根腐れを引き起こす原因となります。
水やりを控えるのは気相を確保し根腐れを防ぐため
水やりを控える、と言うのはおそらく
根腐れを心配しているのだと思いますが、
本来であれば水やりの頻度を調整するのでは無く
毎日水やりをしても十分な気相が確保できる
用土に植え付けることではないでしょうか?
水はけ、通気性の良い用土に植え付ければ
水やりをしても余分な水分は流れ出ます。
水やりは植物の根から分泌される老廃物を洗い流す役割もある
植物の根は用土内の水分を吸い上げている一方で
さまざまな老廃物を分泌しています。
例えば剥がれ落ちた根の細胞や有機酸などですね。
水はけ・通気性の良い用土であれば
水やりをすることで老廃物は流れ出るし
細胞片も土壌酸素が確保されていれば微生物によって分解されます。
水やりを控える理由は無いのでは?それより用土の見直しを
水やりはとても重要で、それを控える意味は無いと考えています。
もし根腐れが心配なのであれば水やりを控えるのでは無く、
植え付け用土の見直しをするべきです。
水やりは毎日(できれば午前中に)、たっぷりが基本。
風通しの悪さも水の循環を妨げる
水がたっぷりあればうどんこ病にならないのであれば、
バラを水耕栽培すればどうでしょうか?
…残念、水耕栽培でもバラのうどんこ病は発生するようです。
これも「水の循環」という観点から見れば説明できそうです。
バラは葉にある気孔を開閉させることで蒸散を行っています。
蒸散作用によって体温調節をしているのですが、
風通しの悪い場所だとこの蒸散が上手く作用しません。
室内の水耕栽培でうどんこ病が発生する原因としては
この風通しの悪さが原因として挙げられます。
うどんこ病対策のテーマは「水の循環を止めるな!」
私が提案するうどんこ病対策のテーマは、
「水の循環を止めるな!」
です。
バラの無農薬栽培でうどんこ病に無縁でいられたのは
一般的なバラの栽培方法と比べて
水の循環がスムーズにできていたからなのだと思っています。
肥料は一度にたくさんでは無く、少量をこまめに与える
用土の保肥力を上回る肥料成分は土壌溶液の浸透圧を高めます。
植物の根は土壌溶液よりも根の細胞の浸透圧を高めることによって
水を吸い上げているので、土壌の浸透圧が高まると
水を吸い上げづらくなります。
植物にとっては肥料よりも水の方が重要な物質なので、
…重要なのでもう一度
「水の方が肥料よりも重要なので!」
植物が水を吸い上げられなくなるほど大量の肥料を与えることは
厳に慎むべきだと思います。
風通しの良い場所で蒸散作用を十分に機能させる
バラは葉の気孔の開閉による蒸散作用で
根から吸い上げた水を全体に行き渡らせます。
それにより体温調節も行っているので
風通しの良い場所で育てることは思っている以上に需要です。
住宅が密集している地域やマンションのベランダなどでは
風通しの確保は難しい課題ですが、
一株一株の間隔を十分に取るなどできるだけ工夫をしたいですね。
水はけ・通気性の良い用土に植え付け、たっぷり水やり
水はけ・通気性の良い用土に植え付けることは
水の循環においてかなり重要なポイントです。
鉢植えであれば水やりをするとフワッと水がたまって
スーッと水が引いて流れ出るくらいが理想。
水やりはバラに新鮮な水と酸素を供給すると同時に
老廃物の排出をさせるためにも重要です。
毎日、できれば午前中にたっぷりと水やりして下さい。
ま・と・め
長々と記事を書いてきましたが、
結局のところ大切なのは栽培の基本でした…というオチ(汗)。
期待外れだった…と言う方、ゴメンナサイ。
でも、「水の循環」は本当に大切ですよ。
無農薬でうどんこ病に悩まされていない理由って
他に思い当たらない。
うどんこ病は農薬散布はもちろん、
有機液肥の散布や微生物培養液(えひめAIなど)の散布といった
無農薬での対策も紹介されているので
対症療法の選択肢は多いと思います。
でも、いま一度栽培の基本に立ち返るのも良いのではないでしょうか。
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